273系やくも乗車レビュー！揺れと座席を徹底解説

2025年11月17日

こんにちは。Shikokuレールノート、運営者の「よんてつ」です。

2024年4月6日、実に42年ぶりに伯備線の主役が交代し、ピカピカの新型特急「やくも」273系がデビューしましたね。この「273系やくも乗車レビュー」というキーワードでお越しの皆さんは、きっと期待と少しの不安が入り混じった気持ちなんじゃないかなと思います。

特に気になるのは、「あの独特の揺れはどうなった？」「名高い”やくも酔い”は本当に克服されたの？」という乗り心地の部分。そして、今回の新型車両で最大の目玉とも言える「ウワサの座席、特にセミコンパートメントの詳細はどうなってるの？」という点ですよね。

何を隠そう、私も旧型の381系には何度も乗車経験がありまして、あのカーブで「グイッ」と車体が傾く独特の自然振り子には、毎回「おっ、来るぞ…！」と身構えるような、ある種のスリルすら感じていました。あれはあれで国鉄時代の貴重な体験だったと思います。

今回の記事では、その旧型381系との乗り心地の比較を私の体感ベースで詳しくレビューしつつ、グリーン車や普通車のシートピッチ（快適性）、全席コンセントやWi-Fiといった現代の特急として必須の車内設備、さらには争奪戦必至のセミコンパートメントの詳しい予約方法や料金体系まで、皆さんが知りたい情報を徹底的に掘り下げていきますね。

この記事でわかること

新型273系の「乗り心地」と揺れ対策の進化
大注目の「セミコンパートメント」の全貌と料金
グリーン車・普通車の各座席と車内設備
セミコンパートメントの詳しい予約方法

273系やくも乗車レビュー【乗り心地編】

さて、まずは何をおいても一番気になる「乗り心地」からいきましょう。旧型381系には「やくも酔い」という、特急列車としてはちょっと不名誉な俗称がつきまとうほど、その揺れは個性的でした。42年ぶりの新型車両で、JR西日本がこの長年の課題にどういう答えを出したのか。技術的な側面と、私のリアルな乗車体感の両方から詳しく見ていきます。

やくも酔いは克服？381系との比較

旧型の381系は、1970年代にデビューした日本初の「自然振り子方式」を採用した、国鉄時代の傑作車両でした。カーブの多い伯備線を、車体を傾けることで高速で駆け抜ける。この技術のおかげで、岡山～出雲市間の所要時間は大幅に短縮されました。

ただ、この「自然振り子」には構造的な弱点がありました。
それは、あくまでカーブに進入した際に発生する「遠心力」をトリガーとして受動的（リアクティブ）に傾く仕組みだったことです。

これにより、どうしても2つの問題が発生していました。

傾斜の遅れ（タイムラグ）：カーブに入ってから一瞬遅れて、「グイッ」と車体が傾き始める。
揺り戻し：カーブを抜けた後、傾いた車体が直立に戻る際に、「グラッ」と振り子特有の揺れが発生する。

この、乗客の予測とズレる「不意打ち」のような傾きと揺り戻しこそが、乗客の三半規管を直撃し、「やくも酔い」と呼ばれる乗り物酔いを引き起こす最大の原因だったと、私は分析しています。

揺れを抑える新型振り子の実力

では、新型273系はどうか。
この車両には、この課題を根本から解決するため、国内初となる「車上型・制御付自然振り子方式」という革新的な技術が搭載されました。

ちょっと難しい名前ですが、すごく簡単に言うと「超インテリジェントになった賢い振り子」です。

旧型がカーブに入ってから「反応」していたのに対し、新型はカーブに入る「前」から動き出します。

予測制御のメカニズム

なぜそんなことができるのかというと、車両が「この先どういうカーブが来るか」をすべて把握しているからです。

あらかじめ車載コンピュータに、伯備線の詳細な路線マップ（カーブの位置、半径、長さ）がすべてインプットされている。
車体に搭載されたジャイロセンサーやATS車上子からの情報で、「今、自分が路線のどこにいるか」を極めて高精度にリアルタイムで検知。

これら複数の情報を組み合わせることで、「よし、あと何メートルで半径〇〇のカーブが来るぞ」と予測し、遠心力が発生するよりも「前」に、最適な角度に車体を傾け始める能動的（プレディクティブ）な制御が可能になったんです。

技術の進化点
この革新的な「車上型・制御付自然振り子方式」に関する技術的な詳細は、JR西日本の公式発表でも解説されています。まさにエンジニアリングの勝利ですね。
（出典：JR西日本『新型やくも（273系）について』）

従来の「反応」から「予測」へ。このパラダイムシフトこそが、273系の核心技術なんです。

大幅に改善された乗り心地を検証

この技術的進化は、乗車体感として「劇的」と言っていいほどの差を生み出していました。

381系がカーブで「グイッ！」と傾き、「グラッ！」と揺り戻されていた感覚だったのに対し、273系はカーブに差し掛かる少し手前から、まるで高級車が滑らかにコーナリングするかのように「スーッ…」と静かに傾き始めます。 そしてカーブを通過中はその角度をピタッと維持し、出口でまた緩やかに直立へ復帰するんです。

「やくも酔い」の原因だった「不意打ちの揺れ」が根本的に排除されたことで、乗り心地は驚くほど快適になりました。体感的には、揺れの「量」が減ったというより、不快な「揺れの質」が根本的に変わったという印象です。

JR西日本の公式発表では「乗り物酔いがこれまでと比べ、最大23%改善された」という具体的な数値も公表されていますが、私の体感としては、この数字以上に快適性が向上していると感じましたね。これなら、車内でPC作業をしたり、読書を楽しんだりする余裕も十分にあると思います。

【よんてつメモ】乗り比べにおすすめの区間
もし旧型381系と新型273系の乗り比べを体験したいなら、伯備線の中でも特にカーブが連続する「備中高梁駅～新見駅～生山駅」間を含む乗車がおすすめです。両者の揺れの違いを最も劇的に体感できるはずですよ。

普段からJR四国の2700系に乗っていると、違和感が無いほどの乗り心地と言えば分かりやすいかもしれませんが、強いて違いを言うなら2700系は“スポーティ”、273系は“しなやかで滑らか”と言った感じでしょうか。
参考までにこちらの記事もご覧いただければと思います。「JR四国 2700系の台車構造を徹底解説！性能の秘密とは」

273系やくも乗車レビュー【座席・設備編】

揺れのストレスから解放されたところで、次は「くつろぎ」の空間、つまり座席や車内設備を詳しく見ていきましょう。「我が家のようにくつろげ、温もりのある」という273系のデザインコンセプトが、インテリアの随所に色濃く反映されていました。

注目のセミコンパートメントを解説

新型やくも273系を象徴する、最大の目玉設備が、1号車（グリーン車と同じ車両）の後方（出雲市寄り）に設けられた「セミコンパートメント（半個室）」です。

ここは本当に「戦略的」な空間だと感じました。

構成：4人用が2区画、2人用が2区画の合計4区画のみ。
内装：「樹のぬくもり」を感じる木目調の内装と、プライベート照明が落ち着いた空間を演出。
テーブル：出雲の「雲」をイメージしたという、大型の専用テーブルが特徴的です。

最大のウリ「ノビノビシート」

そして、このセミコンパートメント最大の特徴が、JR西日本の定期特急列車では初採用となる「ノビノビシート」です。

これは、座面を手前に引き出すことで、座席と足元の空間がフラットに近い状態になる機能です。（※完全に平らなフルフラットではありません）

これにより、

靴を脱いで足を思い切り伸ばす
あぐらをかく
（小さなお子様なら）横にならせてあげる

といった、「我が家」のリビングのような、リラックスした過ごし方が可能になります。これは特に、小さなお子様連れの家族旅行には、この上なくありがたい機能ですよね。

セミコンパートメントの魅力まとめ

周囲の目を気にしなくて良い、高いプライバシー性
足を伸ばしてくつろげる「ノビノビシート」機能
グループで会話を楽しめる大型専用テーブル

家族旅行や友人との小グループ旅行において、これ以上ない「目的地となる座席」だと思います。

セミコンパートメントの予約と料金

さて、これだけ豪華な設備ですから、「さぞお高いんでしょう？」と思うじゃないですか。私も最初はそう思っていました。

しかし、ここがJR西日本の「戦略」のすごいところ。
このセミコンパートメント、なんと追加の個室料金やグリーン料金、寝台料金のようなものが一切不要なんです。

【最重要】セミコンパートメントの料金
乗車券のほかに必要なのは、通常の「普通車指定席」の特急料金のみです。
（※自由席特急券やグリーン券では利用できません）

この半個室空間を、通常の指定席料金だけで利用できるというのは、はっきり言って「破格」です。これはもう、高速バスやマイカー利用の家族・小グループ客を、伯備線ルートに強力に呼び戻そうという、JR西日本の強い意志を感じますよね。

e5489での詳しい予約方法

CleanShot 2025 11 10 at 22.20.18 — 出典：JRおでかけネット

ただし、当然ながら「普通車指定料金」で乗れるこんな魅力的な座席、黙っていても売れるわけがありません。案の定、予約は「超」激戦のプラチナチケットと化しています。

しかも、予約方法が非常に特殊なので、ここを間違えると予約のスタートラインにすら立てません。

【予約の最重要注意点】
JRのネット予約「e5489」や駅の「みどりの券売機」で、通常の列車検索（例：「岡山」駅 → 「出雲市」駅）をしても、セミコンパートメントは選択肢に「出てきません」。

私も最初これを知らずに、「あれ？満席なのかな？」と勘違いしてしまいました。予約するには、必ず以下の専用ページ・専用ボタンから操作する必要があります。

▼ 予約の手順（e5489の場合）

JR西日本のネット予約「e5489」にログインします。
トップページなどにある、「やくも（セミコンパートメント）予約」の専用ボタン・専用ページにアクセスします。（※通常の「経路検索」ではありません！）
希望の乗車日・列車を選択します。
空席があれば「2人用」または「4人用」（2名用…2名で利用可／4名用…3〜4名で利用可）を選択して予約を進めます。

予約は、他の指定席と同様、乗車日の1ヶ月前の午前10時から開始されます。
週末や連休、観光シーズンは、まさに「10時打ち」必須の座席と言えそうです。予約に挑戦される方は、事前にe5489の操作方法をしっかり確認しておくことを強くおすすめします。

予約に関するご注意
この記事で紹介している予約ルールやe5489の画面仕様は、将来的に変更される可能性があります。実際に予約操作を行う際は、必ずJR西日本の公式サイト（e5489の使い方ページなど）で、最新の予約方法をご自身でご確認くださいますようお願いします。

グリーン車の座席と快適性

「セミコンパートメントは魅力的だけど、一人で静かに、贅沢な時間を過ごしたい」という方には、1号車の前方（出雲市寄り）に設置されたグリーン車が最適解です。

座席配置は、もちろん最上級のゆとりを誇る1列＋2列。
座席の幅、前後のシートピッチともに、普通車とは比較にならないほどのパーソナルスペースが確保されています。

座席そのものも豪華仕様で、

滑らかな電動リクライニング
ふくらはぎを支える電動レッグレスト
高さ・角度を細かく調整できる可動式の枕
大型のインアームテーブル（肘掛け収納式）

といったフル装備。落ち着いた色調で統一されたインテリアと、振り子車両とは思えないほどの静粛性も相まって、まさに「動くエグゼクティブルーム」といった趣です。長距離のビジネス利用や、自分へのご褒美旅には最高の空間ですね。

普通車の座席とシートピッチ

セミコンパートメントやグリーン車が注目されがちですが、もちろん普通車（基本編成では2～4号車）も大幅に進化しています。

座席配置は標準的な2列＋2列。
私が特に「良いな」と感じたのは、その座席のクッション性です。最近の新型車両は、軽量化やコストダウンのためか、座面が薄くハードな座席も少なくないですが、273系は違いました。

「我が家のようにくつろげる」というコンセプト通り、中国山地を縦断する3時間以上の乗車でも疲れにくいよう、十分な厚みと適度な柔らかさを持つクッションが採用されている印象を受けました。

シートピッチ（座席の前後間隔）も、窮屈さを感じることは全くなく、十分なスペースが確保されています。また、窓が旧型よりも大型化されたことで、車窓がよりダイナミックに楽しめるようになったのも嬉しいポイント。伯備線のハイライトである高梁川沿いの美しい渓谷美を、存分に堪能できますよ。

全席コンセントとWi-Fi完備

今や、長距離移動の特急列車において「あって当たり前」となった設備も、もちろんパーフェクトに網羅されています。

全座席（グリーン車・普通車・セミコンパートメント）にコンセント（電源）が設置されました。これは本当にありがたいですよね。スマホやPCのバッテリー残量を気にすることなく、岡山～出雲市間を移動できます。

もちろん、客室内では公衆無線LAN「JR-WEST FREE Wi-Fi」も完備されています。動画を見たり、SNSをチェックしたり、ビジネスでメールや資料作成をしたりと、移動時間を有効に活用できる環境が整いました。

車内チャイムやフリースペース

座席以外のパブリックスペースや、旅の演出にも「くつろぎ」のための配慮が随所に見られました。

旅の気分を盛り上げてくれる車内チャイムには、なんと沿線（鳥取県米子市）出身のバンド「Official髭男dism」の楽曲『I LOVE…』のオルゴールアレンジが採用されています。（※岡山発・出雲市行の下り列車で採用）
上り列車（出雲市発・岡山行）では『Pretender』のオルゴールアレンジが流れます。

このほか、