こんにちは。Shikokuレールノート 運営者の「よんてつ」です。高松駅から松山駅まで、普通電車で移動すると実際どれくらいの時間がかかるのか、特急と比べてどれくらい料金が安くなるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
また、長時間の移動になるため、途中の乗り継ぎや車内の設備についても不安があるかもしれません。この記事では、私が実際に予讃線を利用して得た経験をもとに、移動のコストパフォーマンスや、ルールが大きく変わった青春18きっぷを利用する際の注意点、そして長旅を楽しむためのコツを分かりやすく解説します。
- 特急列車や高速バスと比較した際の具体的な時間と料金の差
- 乗り継ぎ駅である観音寺や伊予西条での食事と休憩スポット
- 長時間の乗車でも快適に過ごすための車両設備と注意点
- 移動そのものを観光に変える車窓からの絶景ポイント
高松駅から松山駅への普通電車移動の時間と料金
まずは、最も気になる時間とコストのバランスについて見ていきましょう。普通電車での移動は、単なる「我慢」ではなく、圧倒的な「節約」と「旅情」を得られる選択肢です。ここでは、他の交通手段と比較しながら、その実力を検証します。

特急や高速バスとの所要時間を比較
高松駅から松山駅への移動手段として、主に「特急列車」「高速バス」「普通列車」の3つが挙げられます。それぞれの所要時間と概算運賃を比較してみましょう。多くの旅行者が「時間はかかるけれど、どれくらい安くなるのか?」という点を最も重視しているはずです。以下の表に、それぞれの交通手段のリアルな数値をまとめました。
| 交通手段 | 所要時間(目安) | 運賃(目安) | 特徴・メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 特急列車(いしづち等) | 約2時間34分 | 約6,160円 (通常期自由席) | 最速で到着。コンセント付き車両(指定席等)もあり快適。 | コストが最も高い。気軽な移動には不向き。 |
| 高速バス(坊っちゃんEXP) | 約2時間50分 | 約4,400円 | 特急に次ぐ速さで、座席もリクライニング確約。 | 渋滞リスクがある。車窓からの景色は単調になりがち。 |
| 普通列車(定価) | 約4時間30分〜 | 3,960円 | 時間はかかるが、途中下車の自由度が高い。 | 乗り継ぎが必須。ロングシートだと疲れやすい。 |
| 普通列車(18きっぷ) | 同上 | 約3,333円〜 (3日間用換算) | 期間・条件付きだがコストパフォーマンスは最強。 | 利用期間が限定。仕様変更により柔軟性が低下。 |
このデータから読み取れる事実は明確です。普通電車を利用することで、特急列車の6割程度のコストで移動が可能になります。具体的には、特急自由席利用時(約6,160円)と比較して、普通列車の定価(3,960円)であれば約2,200円の節約になります。確かに所要時間は約2倍、時間にして2時間以上の差がつきますが、これを「時給」として捉えてみてください。浮いた約2,200円のお金があれば、松山に到着してから愛媛の郷土料理「鯛めし」の豪華なランチを食べたり、道後温泉の少し良いコースに入浴したりすることができます。
また、高速バスとの比較でも重要です。「坊っちゃんエクスプレス」は非常に優秀な競合相手(約4,400円)ですが、バスは高速道路(内陸部)を走るため、瀬戸内海の美しい景色はほとんど見られません。一方、予讃線の普通列車、特に海沿いを走るルート(海岸寺周辺など)は、移動そのものが観光コンテンツになり得ます。「安さ」だけでなく、「旅の情緒」を重視するなら、あえて時間をかけて普通列車を選ぶ価値は十分にあります。
ただし、注意が必要なのは「乗り継ぎの接続」です。予讃線の普通列車は、日中の時間帯によっては接続が悪く、乗り継ぎ駅で30分〜1時間近く待つこともあります。乗換案内アプリで検索する際は、単に出発時間だけでなく、「乗り継ぎ駅での待ち時間がどれくらいあるか」もしっかり確認してプランを立てましょう。
青春18きっぷなどのお得な切符
普通電車で高松から松山へ移動する場合、定価の切符(3,960円)をそのまま買うよりも、「企画乗車券」を利用するのが断然お得になるケースがあります。その代表格が「青春18きっぷ」ですが、2024年の冬季よりルールが劇的に変更されたため、過去の知識のまま利用しようとすると痛い目を見ることになります。ここを必ず押さえておいてください。

【重要】青春18きっぷのルール変更点(2024年冬〜)
かつては「1枚で5回分(飛び飛びの日程でもOK、グループでシェアもOK)」という非常に自由度の高い切符でしたが、現在は以下の仕様に変更されています。
1. 「連続する3日間用(10,000円)」または「連続する5日間用(12,050円)」の2種類。
2. 「1枚につき1名」のみ利用可能(複数人でのシェア不可)。
3. 自動改札機が利用可能に。
つまり、「友達と2人で、日帰りで高松〜松山を往復するのに1枚の18きっぷをシェアする」といった使い方はできなくなりました。 また、「今週の土曜日と、来週の土曜日に使う」といった使い方もできません。「連続した日程」で旅行する場合にのみ、その威力を発揮します。例えば3日間用(10,000円)を購入した場合、1日あたりのコストは約3,333円となります。定価の3,960円と比較すると、片道利用だけでは元が取れませんが、「往復利用」や「3日間かけて四国を一周する」といったプランであれば、依然として最強のコスパを誇ります。
「青春18きっぷの時期じゃない」あるいは「連続利用はしない」という場合に検討したいのが、「週末乗り放題きっぷ」です。土休日の1日間、JR四国全線の特急列車自由席も含めて乗り放題で約12,000円程度の設定です。片道の普通列車移動だけなら割高ですが、「往復かつ特急も視野に入れる」場合には選択肢に入ります。また、四国観光・旅アプリ「しこくるり」で購入できるデジタルチケットも要チェックです。時期によってはアプリ限定のお得なきっぷが出ていることがあります。
ICカードを利用する際の注意点

このセクションは、この記事の中で最も重要、かつ最もトラブルが起きやすいポイントですので、熟読してください。結論から申し上げます。高松駅から松山駅まで、ICカード(Suica、ICOCA、PASMOなど)を使って移動することはできません。
「え?高松駅にも自動改札があるし、松山駅にも新しい自動改札があるよね?ピッとして入って、ピッとして出ればいいんじゃないの?」と思ったあなた。それが大きな落とし穴なのです。
【絶対厳守】ICカードは高松エリアのみ!
JR四国において、SuicaやICOCAなどの交通系ICカードが利用できるのは、高松駅を中心とした香川県内の一部エリア(高松〜観音寺など)のみです。
松山駅には最新の自動改札機が設置されていますが、これは「紙の切符」と「スマホアプリ(しこくスマートえきちゃん)のQRコード」専用であり、ICカードには対応していません。タッチする場所すらありません。
もし誤って高松駅でICカードをタッチして入場し、そのまま普通電車を乗り継いで松山駅まで行ってしまった場合、どうなるでしょうか?松山駅の改札機を通れず、有人改札で駅員さんに事情を説明して処理(入場記録の取り消し等)をしてもらい、さらに全区間の運賃(3,960円)を現金で支払う必要があります。混雑時だと処理に時間がかかり、せっかくの旅の気分が台無しになってしまいます。
「松山市内の路面電車(伊予鉄)ではICカードが使えるようになった」というニュースを聞いたことがあるかもしれませんが、JR線は別物です。JRで高松から松山へ行く際は、ICカードは財布にしまっておいてください。
対策はシンプルです。乗車前に必ず券売機で「紙の切符」を購入すること。 これにつきます。普段都会で生活していてICカードに慣れきっている方は、特に意識して「今日は切符を買う日だ」と自分に言い聞かせてくださいね。

トイレや座席など車両設備の詳細

高松駅から松山駅までの約4時間半〜5時間という長丁場を共にする車両について、詳しく解説します。主に運用されているのは「7000系」や「7200系」という電車ですが、ここで非常に重要な注意点があります。
まず、長旅で最も心配なトイレ事情についてです。予讃線のこの区間を走る普通列車(特に7000系・7200系)には、基本的にトイレが付いていない車両が多いと考えておいた方が安全です。もちろん、トイレ付きの車両が連結されるケースもありますが、運悪くトイレなしの編成に当たってしまうと、次の停車時間の長い駅(観音寺や伊予西条など)まで1時間以上トイレに行けないという事態になりかねません。
「電車にはトイレがあるのが当たり前」という感覚で乗車し、飲み物をガブガブ飲んでしまうのは非常に危険です。対策としては、乗車前に駅のトイレを済ませておくこと、そして乗り継ぎ駅である観音寺駅や伊予西条駅での待ち時間を活用して、必ずトイレ休憩を取ることです。これを徹底することで、安心して旅を楽しむことができます。
次に座席(シート)についてです。7000系などは、進行方向を向いて座れる「ボックスシート(クロスシート)」と、横並びの「ロングシート(ベンチシート)」が混在している構造が多いです。
座席確保の戦略
車窓の景色、特に瀬戸内海を楽しみたいなら、間違いなくボックスシートがおすすめです。しかし、ボックス席の数は限られており、地元の高校生や他の旅行者との争奪戦になります。始発駅である高松駅や、乗り継ぎ駅での入線時には、早めにホームに並んでおくことを強くおすすめします。
また、この区間では「ワンマン運転」が多く行われています。無人駅で降りる場合は、「一番前の車両の一番前のドア」から降りる必要があるケースがほとんどです。車内放送をよく聞き、整理券を取る必要があるのか、運賃箱に直接現金を入れるのか、システムを理解しておく必要があります。初めての方は戸惑うかもしれませんが、「前のドアから降りる」と覚えておけば、大きな失敗は防げます。
観音寺と伊予西条での乗り継ぎ
高松駅から松山駅まで、乗り換えなしで直通する普通列車は一本もありません。
この区間を普通列車で移動する場合、必ずどこかの駅で列車を降り、別の列車に乗り換える必要があります。
基本の乗り継ぎパターン
多くの時間帯で、以下の2つの駅での乗り換え(計2回)が標準となります。
1. 観音寺駅(かんおんじ):香川県の西端
2. 伊予西条駅(いよさいじょう):愛媛県の東予中心地
※時間帯によっては「高松〜観音寺」「観音寺〜松山」のように、1回の乗り換えで済むケースもありますが、直通はゼロです。
まず、最初の関門となるのが観音寺駅です。高松方面からの列車の多くはこの駅が終点となります。ここから先、愛媛県方面へ向かう列車は本数が減るため、接続待ち時間が生じやすくなります。同じホームの向かい側でスムーズに乗り換えられることもあれば、階段を使って別のホームへ移動しなければならないこともあります。
次に、伊予西条駅です。この駅は運行上の重要な拠点で、ここで松山行きの列車に乗り換えるケースが多いです。また、特急列車の通過待ちや切り離し作業などで、長時間の停車時間が発生することもあります。私が利用した際も50分近く待つことがありました。
「乗り継ぎ=面倒」と感じるかもしれませんが、4時間以上の座りっぱなしを防ぐ良いリフレッシュの機会です。トイレに行ったり、ホームの自販機で飲み物を買ったりして、次の列車に備えましょう。

高松駅から松山駅へ普通電車旅を楽しむコツ
長い移動時間を「ただの移動」で終わらせるのはもったいないですよね。ここからは、予讃線の普通電車旅をより豊かにするための、私のとっておきの楽しみ方をご紹介します。

観音寺駅周辺のおすすめランチ
乗り継ぎの拠点となる観音寺駅は、うどん県・香川の西端です。もし乗り継ぎ時間が40分〜50分以上あるなら、駅から徒歩8分ほどの場所にある「麺匠 いりこや」まで足を延ばしてみてはいかがでしょうか。その名の通り、濃厚なイリコ出汁が効いたうどんは、香川県の西の端まで来たことを実感させてくれます。早朝から営業している日もありますが、午後は麺が売り切れ次第終了することもあるので注意が必要です。
もし乗り継ぎ時間が20分程度しかない場合は、無理に店に行くのはリスクが高いです。駅構内のおみやげどころ(キヨスク)や、駅を出てすぐの場所にあるセブンイレブンなどで食料を調達して、駅のベンチや車内で食べるのが賢明です。ただし、車内で食事をする場合、ロングシートだと他のお客さんと対面になってしまい気まずい思いをすることもあります。ボックス席が確保できた時だけにするか、匂いの強いものは避けるなどの配慮を忘れずに。
伊予西条駅で待ち時間の過ごし方
伊予西条駅は「水の都」として知られ、駅の近くで美味しい湧き水(うちぬき)を見かけることもあります。駅周辺のランチスポットとしては、駅の目の前にある居酒屋などがランチ営業をしている場合がありますが、選択肢はそれほど多くありません。駅に隣接したパン屋さん(小麦の奴隷など)があれば、そこで焼きたてパンを買うのが最も手軽で確実です。
鉄道ファン必見!「鉄道歴史パーク in SAIJO」
伊予西条駅のすぐ隣には「鉄道歴史パーク in SAIJO」があります。ここには、かつて四国を走った新幹線…ではなく「0系新幹線」の実車(フリーゲージトレイン試験車両なども)が展示されています。もし乗り継ぎ時間がたっぷりあるなら、食事よりもここで四国の鉄道史に触れてみるのも素晴らしい時間の使い方です。大人でも十分楽しめる内容ですよ。
海が見える駅や車窓からの絶景

「予讃線」と検索すると「海が見える駅」として有名な「下灘駅(しもなだえき)」が出てきますが、実は下灘駅は松山駅よりもさらに先(宇和島方面)にあります。今回の高松〜松山ルート上にはありませんので注意してください。「松山に着いたら、もう一度列車に乗って夕日を見に行く」というオプションプランとして考えておくのが正解です。
しかし、ガッカリする必要はありません!高松〜松山間のルート上にも、素晴らしい絶景ポイントがあります。特におすすめなのが「海岸寺駅〜詫間駅」の間と、「津島ノ宮駅(つしまのみやえき)」周辺です。海岸寺駅を出てしばらくすると、列車は海岸線のすぐそばを走ります。瀬戸内海の穏やかな波と、遠くに浮かぶ島々が織りなす多島美は、まさに四国の原風景。特に夕暮れ時は、水面が黄金色に輝き、息をのむ美しさです。
また、津島ノ宮駅は、1年に2日間(8月の津嶋神社夏季大祭)しか営業しない「幻の駅」ですが、そのホームは海に面しており、通過する車窓からその独特な佇まいを確認できます。ぜひ、進行方向の右側の座席(海側)を確保して、カメラを構えてみてください。
車内での充電や電源確保について
現代の旅に欠かせないスマートフォンですが、残念ながら7000系や7200系などの普通列車には、基本的にコンセント(電源)はありません。特急列車の指定席にはコンセントが付いていることが多いですが、普通列車はあくまで通勤通学用車両がベースとなっているためです。
4時間以上の長丁場、しかも車窓の写真を撮ったり、マップで現在地を確認したり、乗り換え情報を調べたりしていると、スマートフォンのバッテリーはあっという間に減っていきます。いざ松山に着いた時に「充電切れで地図が見れない!」「PayPayが使えない!」となっては大変です。予讃線の絶景を逃さないためにも、モバイルバッテリーは必ずフル充電で持参することをおすすめします。大容量タイプが一つあると、心の余裕が違いますよ。
高松駅から松山駅への普通電車旅まとめ
高松駅から松山駅への普通電車の旅は、時間だけを見れば決して効率的とは言えません。しかし、それ以上に得られる「旅の濃さ」があります。
- 時間はかかるが、特急の約6割のコスト(定価ベース)で移動できる経済的メリット。
- 乗り継ぎ駅でのうどんや鉄道ミュージアムを楽しむ余裕。
- 海岸寺周辺など、瀬戸内海を間近に感じる車窓風景。
- ICカードは通しで使えないため、紙の切符の準備を忘れずに。
- トイレなし車両の可能性を考慮し、駅でのトイレ休憩を計画的に。
特急で駆け抜けるだけでは見落としてしまう、四国の日常や美しい風景に出会えるのが普通列車の醍醐味です。安く済ませた分で、松山の夜を豪華に楽しむのも良いでしょう。ぜひ、時間にゆとりを持って、のんびりとした鉄道旅を楽しんでみてくださいね。

