こんにちは、Shikokuレールノートのよんてつです。
電化されたJR線のホームに立って上を見上げると、線路に沿って何本もの電線が張られています。普段はまとめて「架線」と呼んでいますが、実はパンタグラフが直接触れている1本の線だけが架線というわけではありません。
電車へ電力を届ける設備には、トロリ線、ちょう架線、き電線、ハンガ、がいし、架線柱など、それぞれ違う役割を持つ部材があります。この関係が分かると、なぜ線路の上に何本もの線があるのか、剛体架線とは何なのか、非電化区間にはなぜ架線がないのかまでつながってきます。
JR四国でも、予讃線などの電化区間と高徳線などの非電化区間では線路上の景色がまるで違います。私も普段から四国の鉄道を見ていますが、架線の役割が分かるようになると、駅で列車を待っている時間さえ少し面白くなるんですよ。
この記事では、鉄道の電気設備に詳しくない人でもイメージできるよう、JRの架線とは何なのか、電車へ電気が届く仕組み、代表的な架線方式、剛体架線との違いまで順番に解説します。
- JRでいう架線とトロリ線の違い
- 変電所から電車へ電気が届く仕組み
- カテナリ式や剛体架線などの種類
- JR四国の電化区間と架線の関係
JRの架線とは何か
まず押さえておきたいのが、「架線」という言葉がどこまでを指しているのかです。
日常的にはパンタグラフが接触している電線を架線と呼んでも会話は通じます。ただ、鉄道設備として詳しく見ていくなら、トロリ線やちょう架線など、それぞれの名称を知っておくと仕組みがかなり分かりやすくなります。
架線はトロリ線だけではない
線路の上に設けられている電線類は、一般的に架線と呼ばれます。
その中でも、電車の屋根に取り付けられたパンタグラフが直接接触する線がトロリ線です。
つまり、パンタグラフが触れている電線=トロリ線であり、架線設備を構成する一部分と考えると理解しやすいでしょう。

線路を横から見ると、パンタグラフが触れているトロリ線の上に別の線があり、その間を細い線が何本もつないでいることがあります。この上側の線がちょう架線、上下をつなぐ部材がハンガです。
さらに、変電所から電力を送るためのき電線なども設けられます。そのため、電化区間では線路の上や横に何本もの線が並んで見えるわけです。
パンタグラフが直接触れるのはトロリ線です。その上にあるちょう架線や、電力を送るき電線などと組み合わせて、電車へ安定して電気を供給しています。
鉄道・運輸機構でも、電車線設備は列車へ電気エネルギーを伝達する設備として案内されています。また、列車速度や輸送量、経済性などに応じて適した架線方式が選ばれます。
電車線と電車線路の違い
架線について調べていると、「電車線」「電車線路」「電車線設備」といった言葉も出てきます。
初めて見ると全部同じように感じますよね。
電車線は、集電装置を通じて車両へ電気を供給する導体を指す言葉です。架空式の鉄道なら、パンタグラフが触れるトロリ線が中心になります。
一方、電気を送る線だけでなく、それを支える架線柱、支持金具、がいしなどまで含めた設備全体を扱う場合には、電車線路や電車線設備という表現が使われます。
一般の利用者がそこまで厳密に使い分ける必要はありません。ただ、「架線トラブル」という言葉をニュースで見たときに、トロリ線だけではなく、その周辺設備まで関係する可能性があると分かっているとニュースの理解もしやすくなります。
ニュースなどで「架線のトラブル」と表現されていても、必ずしもパンタグラフが触れるトロリ線そのものだけに問題が起きているとは限りません。支持金具や周辺設備などを含めて確認が必要になる場合があります。
架線がある路線は電化区間
列車を走らせるための架線が線路上に設置されている区間は、基本的に電化区間です。
電車は自分で燃料を積んでエンジンを回すのではなく、外部から供給された電気を使ってモーターを回します。その電気を受け取る代表的な方法が、架線とパンタグラフを組み合わせる方式です。
逆に、走行用の架線がない鉄道路線では、ディーゼルエンジンを搭載する気動車などが使われます。
JR四国は、この電化区間と非電化区間の違いが非常に分かりやすい鉄道会社です。
電車に電気が届く仕組み
電車はパンタグラフを架線へ当てれば、それだけで走るように見えます。
しかし、実際には発電所から送られてきた電気を鉄道用に変換し、変電所から架線へ送り、パンタグラフから車両へ取り込み、さらにレール側を通じて戻す大きな電気回路が作られています。
変電所から架線へ電気を送る
電力会社などから供給された電気は、鉄道沿線に設けられた変電所へ送られます。
変電所では、鉄道車両が使用する電圧や電気方式へ変換したうえで、線路側へ電力を送り出します。
直流電化区間をかなり簡単に表すなら、電気の流れは次のようなイメージです。
変電所 → き電線 → トロリ線 → パンタグラフ → 車両の電気機器 → モーター
もちろん、実際の鉄道設備には電気を区切る装置や保護装置などもあるので、これほど単純ではありません。
ただ、初めて仕組みを理解するなら、「変電所から送られた電気が架線へ入り、パンタグラフから車両へ入る」と考えれば十分です。
このため鉄道路線を電化するには、単純に線路上へ電線を張るだけでは済みません。
変電所、き電設備、架線柱、支持金具、がいし、電気を区分する設備など、多くの設備が必要になります。電化には大きな費用がかかる理由の一つです。
パンタグラフで電気を取り込む
電車の屋根に付いている集電装置がパンタグラフです。
パンタグラフは上向きに力をかけ、トロリ線へ接触しながら走行します。
停車している電車だけを見ると簡単な仕組みに思えるかもしれません。しかし、走っている列車は常に前へ移動しています。
しかも特急列車などは高速で走ります。それでもパンタグラフは架線との接触をできるだけ安定させ、必要な電力を車両へ送り続けなければなりません。
そのためトロリ線は、単に電柱から電柱へ電線を張っているだけではなく、張力や高さ、支持方法などを考えて設置されています。
架線とパンタグラフは、車両と地上設備が直接触れ合う数少ない場所でもあります。
モーターを回して列車が走る
パンタグラフから車両へ取り込まれた電気は、車内のさまざまな電気機器を通り、最終的に走行用モーターを動かすために使われます。
現在の電車では、電力をそのままモーターへ流しているわけではなく、制御装置によってモーターの回転を細かく調整しています。
運転士がマスコンを操作すると、車両側の制御装置が必要な力を作り出し、モーターが車輪を回します。
つまり、架線は単なる「電線」ではありません。列車の動力そのものを線路沿いから供給する設備です。
電気はレール側へ戻る
架線からパンタグラフへ入った電気は、モーターで使われれば消えてなくなるわけではありません。
一般的な直流電化鉄道では、車輪からレールへ電流が流れ、レールなどを通じて変電所側へ戻る回路になっています。

なので電化鉄道では、レールも単に列車の重量を支えたり進行方向を案内したりするだけではありません。
電気回路の一部としての役割も持っています。
普段何気なく見ている2本のレールですが、架線と組み合わせて大きな電気回路を構成していると考えると、鉄道設備の見え方が少し変わってきます。
JRの架線電圧は同じではない
「JRの架線は何ボルト?」と疑問に思う人も多いでしょう。
ここで注意したいのは、JRの架線電圧は全国一律ではないことです。
JRの在来線には直流電化区間と交流電化区間があり、地域によって方式が異なります。さらに新幹線では在来線とは異なる電化方式が採用されています。
一方、JR四国の電化区間では直流1,500Vが採用されています。
家庭のコンセントとは比較にならない高い電圧です。駅や公道から普通に鉄道を見ている分には問題ありませんが、電気設備へ近づいたり、物を接触させたりするのは非常に危険です。
架線は高電圧の鉄道設備です。垂れ下がった電線や破損した設備を見つけても絶対に近づいたり触れたりしないでください。異常を見つけた場合は鉄道会社や駅係員などへ知らせましょう。正確な安全情報は鉄道事業者の公式案内を確認し、設備に関する判断や作業は必ず専門家へ相談してください。
架線を構成する主な部材
電化区間で線路の上を見ると、電線や細い金具が何本も組み合わされています。
全部同じように見えるかもしれませんが、それぞれ役割が違います。ここでは、駅や踏切からでも比較的見分けやすい代表的な設備を見ていきます。
トロリ線
トロリ線は、パンタグラフが直接接触する電線です。
電車へ電気を渡す最後の部分になるので、架線設備の中でも非常に重要な存在ですね。
パンタグラフは列車が走っている間、トロリ線の下面へ接触し続けます。そのためトロリ線は徐々に摩耗します。
当然ですが、摩耗を放置するわけにはいきません。状態を検査しながら使用し、必要に応じて補修や交換が行われます。
また、トロリ線をよく見ると、線路中心の真上へ一直線に張られていないことがあります。
これはパンタグラフのすり板の同じ場所だけが削れ続けることを防ぐためです。トロリ線の位置を左右へ少しずつ変化させ、パンタグラフの接触位置を分散させています。
一見すると微妙なズレですが、ちゃんと理由があるんです。
ちょう架線とハンガ
一般的なカテナリ式架線では、トロリ線の上側にちょう架線があります。
そして、ちょう架線から下方向へ伸びる細い部材がハンガです。
このハンガを使い、下側のトロリ線を一定の間隔で吊っています。
もしトロリ線だけを架線柱から架線柱へ渡した場合、電線は自分の重さによって中央部分が下がります。
極端なたるみがあると、走行するパンタグラフが安定して接触できません。
そこで上側のちょう架線から複数のハンガを使ってトロリ線を支え、パンタグラフが通過する高さを適切に保ちやすくしています。

き電線
き電線は、変電所から電車線へ電力を送る役割を持つ線です。
トロリ線と違い、パンタグラフが直接接触するための線ではありません。
線路沿いを見るとトロリ線以外にも太い線が通っていることがありますが、すべてがパンタグラフ用ではないということですね。
また、設備によってはき電線とちょう架線の機能を組み合わせたき電ちょう架方式もあります。
鉄道の電気設備は、性能を確保するだけではなく、保守や更新のしやすさも考えながら構成されています。
がいし
架線は高い電圧がかかっているため、金属製の架線柱や支持物へそのまま接触させることはできません。
そこで使用されるのががいしです。
がいしによって電気的に絶縁しながら、架線を機械的に支えています。
線路の上を見ていると、架線を支える金具の途中に白色や灰色系の部材が入っていることがあります。これががいしです。
「電線を柱へ付けているだけ」に見える架線ですが、電気を流してはいけない部分と明確に分離する必要があります。
架線柱
線路脇に立ち、架線を支えている柱が架線柱です。
1本の柱から腕のような支持物を伸ばして架線を支える場所もあれば、複数の線路をまたぐ大きなビームを設置している駅構内もあります。
なお、架線柱の間隔は全国のJR線ですべて同じというわけではありません。
直線、曲線、駅構内、橋梁、トンネル入口など、それぞれの条件に合わせて設備が配置されます。
架線そのものだけでなく、架線柱の形まで見始めると、駅によってかなり違うことに気付くと思います。
JRで使われる架線の種類
架線には複数の方式があります。
列車の速度、運転本数、必要な電力量、建設費、保守性、トンネルなどの構造条件によって適した方式が変わるため、JR線ならどこでもまったく同じ架線というわけではありません。
| 架線方式 | 主な構造 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 直接ちょう架式 | トロリ線を直接支持 | 比較的シンプルな構造 |
| シンプルカテナリ式 | ちょう架線+ハンガ+トロリ線 | 在来線で広く使われる |
| コンパウンドカテナリ式 | ちょう架線+補助ちょう架線+トロリ線 | 高速・大容量輸送に対応しやすい |
| き電ちょう架方式 | き電とちょう架の機能を統合 | 設備を簡素化しやすい |
| 剛体架線 | 剛性の高い支持体で電車線を保持 | トンネルなど高さの限られた場所に向く |
直接ちょう架式
直接ちょう架式は、ちょう架線を設けず、トロリ線を直接支持する比較的シンプルな架線方式です。
部材が少ないため構造は分かりやすいものの、速度が上がるとパンタグラフとの安定した接触を確保することが難しくなります。
そのため、一般的な高速鉄道で何でも直接ちょう架式にすればよいわけではありません。
架線方式は、列車速度と必要な集電性能のバランスを考えて選択する必要があります。
シンプルカテナリ式
在来線の架線を理解するとき、まず覚えておきたいのがシンプルカテナリ式です。
上側にちょう架線を設け、ハンガを介して下側のトロリ線を吊る構造になっています。
下側のトロリ線をパンタグラフが走行し、上側のちょう架線がトロリ線を支えるという関係です。
駅で架線を横から見ると、上と下の2本の線の間を、縦方向の細い線が何本も結んでいる姿を見ることができます。
「架線」と聞いて最初に想像する構造としては、この方式がかなり分かりやすいでしょう。
コンパウンドカテナリ式
コンパウンドカテナリ式では、ちょう架線とトロリ線の間に補助ちょう架線を追加します。
シンプルカテナリよりも線の構成が増えるため、見た目も複雑です。
その一方で、架線の状態をより均一にしやすく、高速運転や大きな電流が必要となる区間などに対応しやすくなります。
ただし、部材が多くなれば保守する場所も増えます。
鉄道設備は長期間使い続けるため、建設時の性能だけでなく、将来の点検や交換まで考えなければなりません。
き電ちょう架方式
き電ちょう架方式は、その名前から想像できる通り、き電線とちょう架線の役割を組み合わせる方式です。
別々に設けていた線の機能をまとめることで、設備の簡素化につなげられます。
設備点数を減らせれば、点検や保守の対象も減らせる可能性があります。
架線は「列車が速く走れるか」だけで考える設備ではありません。
安全性を維持しながら、どのように検査し、補修し、将来更新していくのか。そうした長期的な視点も重要になります。
剛体架線とは何か
「剛体架線」という言葉は、一般的な架線と比べると少し聞き慣れないかもしれません。
ところが地下鉄やトンネルなど、線路上の空間に余裕がない場所では重要な方式です。
普通のカテナリ式架線とどこが違うのかを知ると、剛体架線が使われる理由も理解しやすくなります。
剛体架線の構造
剛体架線は、一般的なカテナリ式のように柔軟なちょう架線からトロリ線を吊るのではなく、剛性の高い導体や支持体を用いて電車線を保持する方式です。
名前に「剛体」と付いているのは、この構造によります。
一般的な架線は線を張力によって張り、ちょう架線やハンガを組み合わせます。一方の剛体架線では、硬い支持構造を使ってパンタグラフと接触する部分を保持します。
鉄道総合技術研究所でも、剛体電車線とカテナリ架線の移行構造などについて研究が行われています。
(出典:鉄道総合技術研究所「剛体電車線とカテナリ架線の移行構造」)
カテナリ架線との違い
カテナリ架線と剛体架線の違いをかなり簡単に言うなら、柔軟な線を吊って支えるか、剛性の高い構造で支えるかです。
| 比較項目 | カテナリ架線 | 剛体架線 |
|---|---|---|
| 支持方法 | ちょう架線とハンガなどで支持 | 剛性の高い支持体で保持 |
| 設備の高さ | 上側にちょう架線の空間が必要 | 高さを抑えやすい |
| 使用場所 | 一般的な地上区間など | 地下線やトンネルなど |
| 保守 | 線条や支持部材を点検 | 方式によって保守軽減を図れる |
この表だけを見ると剛体架線のほうが優れているように感じるかもしれませんが、そう単純ではありません。
列車速度、建設条件、既存設備との接続、必要な集電性能などによって適した方式は変わります。
鉄道設備では「新しい方式だから全部置き換える」という話にはならないんですね。
トンネルで使われる理由
剛体架線が地下線やトンネルと相性がよい最大の理由は、設備の高さを抑えやすいことです。
一般的なカテナリ式架線では、パンタグラフが触れるトロリ線の上に、ちょう架線を設ける空間が必要です。
地上で十分な高さが確保できる場所なら問題になりにくいのですが、トンネルでは天井までの空間が限られます。
トンネル自体を大きくすれば建設費も増えてしまいます。
そこで剛体架線を使えば、一般的なカテナリ式より設備全体の高さを抑えやすくなります。
地下鉄で剛体架線が使われることがあるのも、この特徴が関係しています。

架線方式が切り替わる場所
地上区間でカテナリ架線を使用し、トンネル内で剛体架線を使用する場合、途中で架線方式を切り替えなければなりません。
しかしパンタグラフからすれば、列車はそのまま走り続けています。
そのため切替部分では、パンタグラフがカテナリ架線から剛体架線へ滑らかに移れる構造が必要です。
単純に2種類の電線を突き合わせればよいわけではありません。
このあたりも、普段利用者からはほとんど意識されない鉄道設備の面白いところです。
パンタグラフと架線の関係
架線だけでは電車へ電気を取り込めません。
そこで欠かせないのがパンタグラフです。
高速で走る列車へ、地上側の設備から物理的に接触しながら電気を渡し続ける。よく考えると、かなり高度な仕組みですよね。
架線だけでなく、パンタグラフやモーターなど「電車がなぜ走れるのか」をもう少し深く知りたいなら、図解の多い鉄道技術本を1冊手元に置いておくと理解が早くなります。この記事を読んで興味が出てきた人の次の一冊に向いています。
接触を保ちながら走る
パンタグラフは上方向へ押し上げる力を発生させ、トロリ線へ接触します。
ただし、強く押し付ければよいわけではありません。
必要以上に強く押せば、トロリ線やパンタグラフのすり板が摩耗しやすくなります。
反対に押し上げる力が不足すると、パンタグラフがトロリ線から離れやすくなります。
さらに、パンタグラフが通過すると架線側も動きます。
列車速度が上がるほど、パンタグラフと架線の動きを含めて安定した接触を保つことが重要になります。
離線すると何が起きる
走行中、パンタグラフとトロリ線の接触が一時的に離れることを離線と呼びます。
離線が発生すると、安定した集電が難しくなります。
また、パンタグラフと架線の間で放電が起き、光が見える場合があります。
夜間に電車を見ていて、パンタグラフ周辺が一瞬青白く光った経験がある人もいるでしょう。
こうした現象を見ると、架線とパンタグラフが高速で接触し続けながら電力を供給していることを実感できます。
もちろん、線路へ近づいて確認するものではありません。ホームなど安全な場所から見える範囲で楽しみましょう。
架線は左右に振って張る
トロリ線を正面方向から見ると、線路中心に対して少し左右へ位置を変えながら張られていることがあります。
一見すると「真っすぐ張ったほうがいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、これにも理由があります。
トロリ線が常にパンタグラフすり板の同じ場所へ接触すると、その一点だけが集中して摩耗してしまいます。
そこで、トロリ線を左右方向へ少しずつ振ることで、パンタグラフすり板の広い範囲へ接触させます。
車両側の部品を均等に使うための工夫というわけです。

架線が切れるとどうなる
架線は電車へ動力を供給する設備なので、異常が起きれば列車運行へ大きな影響が出る可能性があります。
ニュースで「架線断線」「架線トラブル」「パンタグラフ確認」といった言葉を見ることがあるのはこのためです。
電車へ給電できなくなる
トロリ線など、列車へ電気を供給する設備に重大な異常が発生すれば、その区間では正常な給電ができなくなる可能性があります。
電車は架線から電力を受け取って走るため、電気が供給できなければそのまま通常運転を続けることはできません。
また、断線した設備が車両や周辺設備へ接触する可能性もあります。
そのため、単純に「電気が来ないから列車が止まる」だけの問題ではありません。
安全確認や復旧作業が必要になる
架線に異常が発生した場合は、列車を止め、安全を確保したうえで設備を点検する必要があります。
原因となった場所が分かったとしても、破損した設備を補修し、再び列車を走らせても問題がないことを確認しなければ運転再開できません。
このため架線トラブルでは、復旧まで時間がかかる場合があります。
実際の復旧時間は故障場所や被害状況、天候などによって大きく変わるため、一律に「何分で復旧する」とは言えません。
線路周辺で切れたり垂れ下がったりしている電線を見つけても、絶対に近づかないでください。電気が流れているか外見だけで判断することはできません。鉄道会社や警察・消防などの案内に従ってください。
JR四国の架線と電化区間
ここまでJRの架線について一般的な仕組みを説明してきましたが、ShikokuレールノートらしくJR四国へ話を戻します。
JR四国は9路線、営業キロ853.7kmの鉄道網を持っていますが、その多くは非電化です。
だからこそ四国では、架線のある線路と架線のない線路の違いを実際に見比べやすいんですよ。

JR四国の主な電化区間
JR四国の電化区間は、主に予讃線、土讃線、本四備讃線の一部です。
| 路線 | 主な電化区間 | 電化方式 |
|---|---|---|
| 予讃線 | 高松~伊予市 | 直流1,500V |
| 土讃線 | 多度津~琴平 | 直流1,500V |
| 本四備讃線 | 児島~宇多津 | 直流1,500V |
予讃線の電化区間では、8000系や8600系の特急電車、7000系や7200系などの普通列車用電車が走っています。
瀬戸大橋を通る本四備讃線では、快速マリンライナーで使われる5000系などの電車も架線から電気を受け取って走ります。
JR四国で使われている電車や気動車をまとめて確認したい場合は、JR四国の車両完全ガイドもあわせて読んでみてください。
JR四国は非電化区間が多い
一方、高徳線、徳島線、鳴門線、牟岐線、予土線などは非電化です。
こうした路線には、電車を走らせるための架線が基本的にありません。
そこで活躍するのが気動車です。
例えば高徳線の特急うずしおでは2700系などの気動車が使われています。徳島地区の普通列車でも、1000型、1200型、1500型など、エンジンを搭載した車両が長く主力を担ってきました。
さらに2026年6月には、JR四国初の営業用ハイブリッド式ローカル車両となる3600系が営業運転を開始しています。
3600系も架線から給電して走る電車ではなく、ディーゼルエンジンで発電し、蓄電池と組み合わせてモーターを駆動するシリーズハイブリッド方式です。
JR四国の電化区間と非電化区間を詳しく知りたい場合は、JR四国の電化区間と非電化区間の違いでもまとめています。
電化と非電化で景色が変わる
電化区間と非電化区間では、車両だけでなく線路周辺の景色もかなり変わります。
電化区間には架線柱が並び、線路の上にはトロリ線やちょう架線などがあります。
非電化区間へ入ると、それらの電車線設備がなくなります。
JR四国の路線を見ていると、この変化が分かりやすい場所が多くあります。
架線がなくなると空が広く見え、鉄道写真でも印象がかなり変わるんですよね。
JR四国全体の路線を確認したい場合は、JR四国の路線完全ガイドも参考にしてください。
高徳線の電化には期待したい
これはJR四国の公式な計画ではなく、あくまで私自身の考えですが、将来的には高徳線にも電化があってほしいと思っている一人です。
高徳線は高松と徳島という県庁所在地を結ぶ路線で、特急うずしおが運転されています。
もし電化されれば電車を使用できるようになり、車両運用の選択肢が増える可能性もあるでしょう。
ただし、「架線を張れば電化できる」というほど簡単な話ではありません。
架線柱、トロリ線、き電設備、変電所、橋梁、トンネル、信号設備との調整など、多くの工事が必要です。
さらに完成後も設備を維持し、検査し、更新していかなければなりません。
2025年度の高徳線高松~徳島の平均通過人員は3,778人/日で、JR四国の中では一定の利用がある路線ですが、電化投資をするかどうかは利用者数だけで決められるものでもありません。
なので、「鉄道好きとして電化してほしい」という気持ちと、実際の経営判断は分けて考える必要があります。
架線を見ると鉄道が面白くなる
架線の仕組みを覚えると、電車に乗るだけでは気付かなかった設備が目に入るようになります。
トロリ線だけを見るのではなく、その上のちょう架線、ハンガ、架線柱、がいしなどへ視線を広げてみてください。
普段利用している駅でも、新しい発見があるかもしれません。
架線をきっかけに、線路・車両・電路設備・駅・運行など鉄道全体の仕組みまで知りたくなったら、図解中心の鉄道入門書が便利です。知らなかった設備を実際の駅で探す楽しみも増えますよ。
電車と気動車を見分けやすい
鉄道車両に詳しくない人でも比較的分かりやすい見分け方が、パンタグラフと架線です。
車両の屋根にパンタグラフがあり、線路上のトロリ線へ接触して走っているなら、その車両は架線から電気を受け取る電車と判断できます。
反対に架線のない路線なら、一般的な電車は走れません。
そこで気動車や、架線給電を必要としない方式の車両が使われます。
JR四国では、高松駅周辺のように電車と気動車の両方が見られる場所もあります。
予讃線を走る電車の隣に、高徳線へ向かう気動車が並ぶ。四国の鉄道らしさを感じる光景です。
駅構内の架線は複雑になる
駅構内を見ると、直線区間よりも架線が複雑になっていることがあります。
理由の一つが線路の分岐です。
ポイントによって列車が別の線路へ進むなら、パンタグラフも進路に合わせて別の架線へ移らなければなりません。
そのため架線側にも、線路の分岐に対応した構造が必要になります。
さらに駅構内では、電気的に区間を分ける設備や複数の線路をまとめて支える支持構造などもあり、どうしても見た目が複雑になります。
線路のポイントと架線を一緒に見ると、「線路だけでなく架線側も分岐しているんだな」と分かりますよ。
架線柱にも種類がある
架線柱も、どこに行っても同じ形ではありません。
1本の柱から横方向へ支持物を伸ばす構造もあれば、複数の線路をまたぐ大きなビームで架線を支える場所もあります。
駅構内では特に複数線をまとめて支える構造が見られます。
鉄道写真を撮る人にとっては、「架線柱がちょうど列車へ重なった」という経験も多いでしょう。
写真では少し邪魔に感じることもありますが、設備として見始めるとなかなか奥深い存在です。
非電化路線では空が広く見える
電化区間から非電化区間へ行くと、線路の上から架線設備がなくなるため、かなり印象が変わります。
特に山間部や海沿いでは、架線柱や架線がないことで空や背景が広く見えます。
予土線などのローカル線で車窓や鉄道写真が開放的に感じられる理由の一つでしょう。
一方、電化区間では架線柱が規則的に続きます。
どちらが良いという話ではなく、電化方式そのものが鉄道風景を作っているところが面白いんです。
観察するときは安全を優先する
架線は面白い鉄道設備ですが、観察するために近づく設備ではありません。
駅のホーム、公道、踏切など、一般の人が立ち入ることを認められている場所から見るだけにしてください。
線路内へ入る、フェンスを越える、架線柱へ登る、高い物を架線方向へ伸ばすといった行為は非常に危険です。
また、事故などで電線が垂れ下がっている場合も近づいてはいけません。
電気が流れているかどうかを外見から判断することはできません。
設備に異常があると思った場合は自分で確認しようとせず、鉄道会社や駅係員などへ知らせてください。
よくある質問
ここでは、JRの架線について特に疑問を持ちやすいポイントをまとめます。
JRの架線を理解するまとめ
JRの架線は、電車の屋根にあるパンタグラフへ電気を届けるために欠かせない鉄道設備です。
- 架線はパンタグラフが触れるトロリ線だけを指すとは限らない
- パンタグラフが直接接触する電線がトロリ線
- ちょう架線とハンガでトロリ線を支える方式がある
- き電線は変電所から電車線へ電力を送る役割を持つ
- シンプルカテナリなど複数の架線方式がある
- 剛体架線はトンネルなど高さが限られる場所に向いている
- パンタグラフと架線は接触しながら電力を車両へ送る
- JR四国の電化区間では直流1,500Vが使われている
- 予讃線や土讃線、本四備讃線の一部が電化されている
- 高徳線や徳島線などJR四国の多くの路線は非電化
これまで何となく「電車の上にある電線」と見ていた架線も、トロリ線、ちょう架線、ハンガ、き電線、パンタグラフの役割が分かると、かなり違って見えてきます。
特にJR四国は、電化区間と非電化区間の両方があり、電車と気動車も走っているので、その違いを実際に見比べやすい鉄道会社です。
次に駅で列車を待つときは、線路や車両だけでなく少し上も見てみてください。
何本も張られた線の役割が分かるようになると、いつもの鉄道風景がもう一段面白くなりますよ。

