JR四国キハ32形の運用状況に関心をお持ちですか?この記事では、国鉄時代からの導入経緯と歴史を紐解きつつ、その基本仕様と特徴を解説します。
また、キハ54形など他形式の違いにも触れながら、現在の活躍する路線一覧や具体的なキハ32形のダイヤ・運行状況を詳しく見ていきます。レトロな雰囲気が漂う車内設備と快適性についても紹介し、キハ32形に乗車できるおすすめ区間を提案します。
さらに、観光列車に関する車両更新・リニューアル情報から、高知地区からの撤退といった運用範囲と将来性、そして廃車を含む今後の動向と注目ポイントまで、JR四国キハ32形の運用に関するあらゆる情報を網羅的にお届けします。
この記事を読むことで、以下の点について理解が深まります。
- キハ32形の基本的な成り立ちから現在の運用状況までの全体像
- 予讃線や予土線における具体的な運行区間や列車種別
- ユニークな観光列車(ホビートレインなど)の詳細と楽しみ方
- 廃車や運用集約など、今後のキハ32形を取り巻く最新の動向
JR四国キハ32形の運用の現状と車両解説

- 国鉄末期に生まれた導入経緯と歴史
- 軽量設計などの基本仕様と特徴
- キハ54形など他形式の違いを比較
- ローカル線ならではの車内設備と快適性
- 現在キハ32形が活躍する路線一覧
- ラッシュ時などキハ32形のダイヤ・運行状況
国鉄末期に生まれた導入経緯と歴史

キハ32形気動車は、財政的に厳しい状況にあった日本国有鉄道(国鉄)が、地方交通線の活性化とコスト削減を両立させる目的で開発した車両です。1987年の国鉄分割民営化直前に登場し、その設計思想とともに四国旅客鉄道株式会社(JR四国)へ引き継がれました。
この車両が生まれた背景には、当時のローカル線が抱えていた問題があります。利用客の減少が続く一方で、旧来の大型車両では輸送力過剰となり、燃費やメンテナンスの面で非効率でした。そこで、バス用の部品を一部に採用するなど徹底したコストダウンを図りつつ、短い車体で小回りの利く軽快なディーゼルカーとしてキハ32形は誕生したのです。
JR四国に継承されてからは、四国島内の様々な非電化路線で地域輸送の主役として活躍を始めました。特に急勾配や急カーブが多い路線でも運用可能な設計は重宝され、長年にわたり地域の足として親しまれてきました。その後の改造により観光列車としても新たな役割を担うなど、登場から30年以上が経過した今もなお、その歴史を刻み続けています。
|
軽量設計などの基本仕様と特徴
キハ32形の最も大きな特徴は、全長16mという短い車体と、徹底した軽量化設計にあります。これは、建設コストが低いローカル線の低い軸重制限(線路が耐えられる重さの制限)に対応するための工夫でした。車体には普通鋼が使われていますが、構造を簡素化することで軽量化を実現しています。
エンジンと走行性能
エンジンは1基のみ搭載しており、決して高出力ではありません。このため、平坦な区間では軽快に走行できますが、予土線などの急勾配区間では速度が落ちることもあります。この点は、キハ32形の運用を語る上で欠かせない特性の一つです。
外観のバリエーション
製造時期によって外観に違いが見られるのも特徴です。初期に製造された車両は丸型の前照灯(ヘッドライト)を備えており、レトロで愛らしい表情をしています。一方、後期に製造された車両は角型の前照灯を採用し、少し引き締まった印象を与えます。この「丸目」「角目」の違いは、鉄道ファンの間での識別ポイントにもなっています。
キハ54形など他形式の違いを比較

JR四国にはキハ32形以外にも、ローカル線で活躍する一般形気動車が複数存在します。中でもよく比較対象となるのが、キハ54形や1000形です。
キハ54形は、キハ32形とほぼ同時期に国鉄が製造した車両ですが、車体長が21m級と長く、より多くの乗客を運ぶことができます。また、エンジンを2基搭載しているため出力が高く、勾配区間でも力強い走りが可能です。一方で、車体がステンレス製である点も大きな違いです。
1000形は、JR四国が発足後に自社で設計・製造した車両です。キハ32形と同じ16m級の短い車体を持つ車両もありますが、より近代的な設計がなされています。例えば、冷房効率の向上やバリアフリーへの配慮など、快適性が大きく改善されている点が異なります。
このように、キハ32形は他の形式と比較して、特に輸送量が少なく線路条件が厳しい路線に特化した、コストパフォーマンス重視の車両と位置づけられます。ベンチレーター(換気装置)の数がキハ54形より1基少ないといった細かな差異も、その設計思想を反映していると考えられます。

ローカル線ならではの車内設備と快適性
キハ32形の車内は、その誕生経緯を色濃く反映したシンプルな造りが特徴です。座席は主にロングシート(窓を背にして線路方向に長く設置された座席)とクロスシート(進行方向またはその逆を向くボックス状の座席)が混在するセミクロスシート配置となっています。
バス用の部品を流用しているため、一部の座席や内装材には鉄道車両らしからぬ雰囲気を感じるかもしれません。これはコストを抑えるための工夫でしたが、今となってはそれが独特のレトロ感を醸し出しています。
注意すべき点
快適性の面では、現代の新型車両と比較すると見劣りする点もあります。例えば、多くの一般車両にはトイレが設置されていません。そのため、長距離を乗車する際は事前に駅で済ませておくなどの注意が必要です。また、エンジン音が車内に響きやすいことや、揺れが大きめに感じられることも、この形式ならではの体験と言えるでしょう。しかし、窓を開けて風を感じながらローカル線の旅を楽しめるのは、キハ32形の大きな魅力の一つです。
現在キハ32形が活躍する路線一覧
現在、キハ32形の一般車両は、主に愛媛県内の路線に集中して運用されています。2025年3月のダイヤ改正で高知地区から撤退したことにより、その活躍の場は西四国が中心となりました。
主な運用線区は以下の通りです。
線区名 | 主な運用区間 | 特徴 |
---|---|---|
予讃線 | 松山駅 ~ 宇和島駅 | 四国西部の主要幹線。通勤・通学輸送も担う。 |
内子線 | (予讃線直通) | 予讃線の旧線にあたり、風情ある景色が広がる。 |
予土線 | 宇和島駅 ~ 窪川駅 | 四万十川に沿って走る景勝路線。観光列車も多数運行。 |
これらの路線、特に予土線は、急勾配や急カーブが連続する区間があり、キハ32形の軽量でコンパクトな車体が最も活かされる舞台となっています。松山運転所に所属する車両が、これらの路線で日々のローカル輸送を支えています。
ラッシュ時などキハ32形のダイヤ・運行状況

キハ32形の基本的な運用は、1両での単独運転(単行運転)です。利用客の少ない昼間の時間帯は、のどかな田園風景や渓谷美の中を1両のディーゼルカーが走る姿が日常的に見られます。
一方で、朝夕の通勤・通学ラッシュ時には、2両編成で運転されることが多くなります。これにより、増える乗客需要に対応しています。理論上はさらに多くの車両を連結することも可能ですが、実際の定期運用で3両以上の編成が組まれることは極めて稀です。
珍しい運用事例
ごく稀に、車両の都合などで3両編成といった通常とは異なる編成で走ることがあり、鉄道ファンの間で話題になることもあります。例えば、過去には丸型前照灯を持つ車両だけで組まれた3両編成が「丸目三十連」と呼ばれ注目を集めました。
また、定期検査などで本来の車両が使えない場合に、キハ32形がキハ54形の代わりを務める(代走)こともあります。こうしたイレギュラーな運用も、キハ32形の動向を追う上での楽しみの一つと言えるかもしれません。
今後のJR四国キハ32形の運用と乗車ガイド

- キハ32形に乗車できるおすすめ区間
- 観光列車など車両更新・リニューアル情報
- 高知地区撤退後の運用範囲と将来性
- 廃車で注目の今後の動向と注目ポイント
- 今後のJR四国キハ32形運用の展望
キハ32形に乗車できるおすすめ区間

キハ32形の魅力を存分に味わうなら、やはり予土線(よどせん)が最もおすすめです。この路線は「しまんとグリーンライン」の愛称で親しまれ、日本最後の清流とも言われる四万十川に沿って走る区間が多く、車窓からの眺めは格別です。
蛇行する川に沿ってゆっくりと進むため、キハ32形のエンジン音やレールの響きを感じながら、のんびりとした鉄道旅が楽しめます。特に江川崎駅から土佐大正駅にかけての区間は、川との距離が近く、美しい景色が続きます。
もう一つのおすすめは、予讃線の伊予市駅から宇和島駅までの区間です。特に海沿いを走る伊予長浜経由の旧線(愛称:愛ある伊予灘線)は、穏やかな瀬戸内海の風景を間近に望むことができます。夕暮れ時には、美しい夕日が車窓を染め上げ、忘れられない光景が広がります。キハ32形でのんびりと普通列車の旅を楽しむには最適な区間です。
|
観光列車など車両更新・リニューアル情報
キハ32形は、そのシンプルな構造を活かして、数々の個性的な観光列車に生まれ変わってきました。特に予土線は、これらの観光列車が集中投入される「テーマライン」として知られています。
列車名 | ベース車両 | 特徴 | 主な運行路線 |
---|---|---|---|
鉄道ホビートレイン | キハ32-3 | 初代0系新幹線を模した外観。車内に鉄道模型を展示。 | 予土線 |
海洋堂ホビートレイン「かっぱうようよ号」 | 不明 | フィギュアメーカー海洋堂と連携。かっぱがテーマ。 | 予土線 |
鬼列車 | キハ32-5 | 愛媛県鬼北町の「鬼」をテーマにしたデザイン。 | 予土線、予讃線 |
アンパンマントロッコ (キクハ32形) | キクハ32-502 | トロッコ車両。キロ185形と連結して運行。 | 瀬戸大橋線、土讃線など |
鉄道ファンの心を掴む「鉄道ホビートレイン」

中でも「鉄道ホビートレイン」は、新幹線の「団子鼻」を再現したユニークな外観で絶大な人気を誇ります。車内には実際に0系新幹線で使われていた座席が設置されているほか、精巧な鉄道模型が展示されており、大人から子供まで楽しめる空間が広がっています。
これらの観光列車は、単なる移動手段ではなく、乗ること自体が目的となる魅力的なコンテンツです。古い車両を創造的に活用することで新たな価値を生み出す、JR四国の巧みな戦略が見て取れます。
|
高知地区撤退後の運用範囲と将来性
前述の通り、2025年3月15日のダイヤ改正は、キハ32形の運用史において一つの転換点となりました。この改正をもって、土讃線の高知駅周辺で長年活躍してきた高知運転所所属の車両が、定期運用から完全に離脱しました。
この動きにより、キハ32形の運用範囲は愛媛県内の予讃線、内子線、予土線に事実上集約されたことになります。これは、JR四国が車両の配置を効率化し、維持管理コストを削減するための戦略的な判断と考えられます。古い車両を特定の地域に集中させることで、部品の供給や整備士の技術継承などを効率的に行う狙いがあるのかもしれません。
将来性については、一般車両の先行きは決して明るいとは言えません。登場から35年以上が経過し、老朽化は着実に進行しています。しかし、予土線のように、キハ32形のコンパクトな車体でなければ運用が難しい、あるいは非効率になる路線も存在します。そのため、後継となる新型車両が導入されるまでは、愛媛地区で限定的に活躍を続けるものと見られます。
廃車で注目の今後の動向と注目ポイント
高知地区での運用終了に伴い、キハ32形の廃車が急速に進んでいます。2025年の春には、高知運転所に所属していた車両と、松山運転所の一部の車両が相次いで多度津工場へ送られました。これは廃車・解体を前提とした動きであり、同形式の車両数が大きく減少したことを意味します。
回送日 | 元所属 | 主な車両番号 | 状況 |
---|---|---|---|
2025年4月9日 | 松山運転所 | 1, 9, 11, 12, 17 | 廃車のため回送 |
2025年4月11日 | 高知運転所 | 15, 16, 18, 19, 20 | 廃車のため回送 |
今後の注目ポイントは、残された一般車両がいつまで活躍を続けるのか、そして観光列車として改造された車両がどうなるのか、という2点です。
JR四国は、2027年度から新型のハイブリッド気動車を導入する計画を発表しています。この新型車両がどの路線に投入されるかはまだ不明確ですが、将来的にはキハ32形のような旧型車両を置き換えていく流れが加速することは間違いありません。
そのため、オリジナルの姿を留める一般車両に乗車したり撮影したりできる機会は、ますます貴重になっていくと考えられます。関心のある方は、早めに行動に移すことが賢明かもしれません。
今後のJR四国キハ32形の運用の展望
- キハ32形は国鉄末期のローカル線向けコスト削減策として誕生した
- 1987年に登場し、JR四国に継承された16m級の軽量気動車である
- 現在の主な運用線区は愛媛県内の予讃線・内子線・予土線に集約
- 基本的な運用は単行(1両)運転で、ラッシュ時は2両編成も見られる
- 2025年3月のダイヤ改正で土讃線(高知地区)での定期運用を終了した
- 運用終了に伴い、高知運転所と松山運転所から多数の車両が廃車回送された
- 残存する一般車両は松山運転所に集中配置されている
- 一般車両は老朽化により、段階的にその数を減らしていく見込み
- 予土線はキハ32形改造の観光列車が集まる中心的な路線である
- 観光列車には「鉄道ホビートレイン」や「鬼列車」などがある
- これらの観光列車は、乗ること自体が目的となる魅力を持つ
- シンプルな構造が多様な観光列車への改造を容易にした
- 観光列車は一般車両よりも長く運用される可能性がある
- JR四国は2027年度からの新型ハイブリッド気動車導入を計画中
- キハ32形の乗車・撮影の機会は今後ますます貴重になることが予想される