徳島地区を走るJR四国の普通列車で見かける、緑色のラインカラーが特徴的な車両。よく似ていますが、実は「1500形」と「1200形」という二つの形式が存在します。今回の記事では、このJR四国の1500形と1200形の違いについて、初心者の方にも分かりやすく解説します。
1500形が導入された目的や、1200形の改造経緯と背景といった成り立ちから、1500形と1200形の基本スペック比較、そしてエンジンや走行性能の違いまで詳しく見ていきます。さらに、外観デザインと塗装の特徴、車内設備と座席レイアウトの差、乗客が感じる快適性・静粛性の比較にも触れます。
ワンマン運転対応の違いや主な運行区間の違い、今後の運用予定と置き換え動向にも言及し、両形式の全てが分かる内容となっています。
- 両形式が生まれた背景とそれぞれの役割
- エンジンや車内設備など具体的なスペックの差
- 外観デザインの細かな見分け方
- 徳島地区での運用方法と今後の展望
JR四国 1500形・1200形の違いを成り立ちから解説
- そもそも1500形が導入された目的とは
- 1200形の改造経緯と誕生した背景
- 1500形と1200形の基本スペック比較表
- エンジンや走行性能の違いをチェック
- ワンマン運転対応の違いはあるのか
そもそも1500形が導入された目的とは

1500形気動車は、2006年に登場したJR四国の次世代を担う新型車両です。この車両が開発された主な目的は、徳島地区で長年活躍してきた国鉄時代の旧型車両(キハ58系など)を置き換えることにありました。
言ってしまえば、車両の近代化が最大のテーマであり、その設計には三つの大きな柱が存在します。
第一に、環境への配慮です。1500形は「クリーンディーゼルエンジン」を搭載しており、コモンレール式燃料噴射システムという先進技術を採用しました。これにより、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質といった有害物質の排出を大幅に削減しています。実際に、屋根上の排気汚れが少ないことからも、そのクリーン性能の高さをうかがえます。
第二に、バリアフリーへの対応です。設計段階から誰もが利用しやすいユニバーサルデザインが全面的に取り入れられました。ホームとの段差を少なくするために床の高さを従来車より8cm低くし、乗降口のステップをなくしたのです。さらに、車内には車椅子対応の大型トイレや専用のフリースペースが確保されています。
そして第三に、乗客サービスの向上です。現代的で洗練された前面デザインや、転換クロスシートを中心とした快適な座席配置を採用し、乗り心地の改善が図られました。このように、1500形は環境・バリアフリー・快適性の三つの観点から、地方交通の未来を見据えて開発された、先進的な車両なのです。
1200形の改造経緯と誕生した背景

最新鋭の1500形が導入された一方で、新たな課題が生まれました。当時、徳島地区の主力だった1000形気動車と、新型の1500形とでは、制御システムやブレーキの仕組みが異なっていたのです。このため、両者を連結して一緒に走らせる「併結運転」が不可能でした。
このままでは車両運用が二つのグループに分断され、効率が著しく低下する恐れがあったのです。
そこでJR四国は、まだ比較的新しい1000形を全て廃車にするのではなく、最小限の投資で最大限の効果を得る道を選びました。それが、1000形の一部に改造を施し、1500形と一緒に走れるように仕様を合わせるという方法です。この改造を受けた車両こそが「1200形」なのです。
改造の最大のポイントは、1500形との併結を可能にするためのシステム改修でした。連結器を電気信号のやり取りが可能なタイプに交換し、制御システムを協調させる工事が中心となりました。他にも、トイレの設置や、外観を1500形に似せた緑基調の塗装に変更されましたが、これらは主目的である併結機能を実現するための付随的な改造と言えます。
つまり、1200形は、既存の車両という資産を有効活用しつつ、新しい車両との橋渡し役を担うために、極めて合理的な判断のもとで誕生した形式なのです。
1500形と1200形の基本スペック比較表
両形式の成り立ちの違いは、具体的な仕様にも表れています。ここでは、主要なスペックを比較表にまとめました。車体の大きさやエンジンの性能など、数値で見ることでその違いが一目瞭然となります。
| 項目 | JR四国 1500形 | JR四国 1200形 |
| ベース車両 | 完全新設計 | JR四国 1000形 |
| 登場・改造年 | 2006年〜 | 2006年・2008年 |
| 車体材質 | ステンレス鋼 | ステンレス鋼 |
| 全長 | 21,300 mm | 21,300 mm |
| 車体幅 | 2,900 mm | 2,800 mm |
| 床面高さ | 1,100 mm | 1,180 mm |
| 機関形式 | SA6D140HE-2 等 | SA6D-125H |
| 機関出力 | 331 kW (450 PS) | 294 kW (400 PS) |
| 変速機 | 変速1段・直結4段 | 変速1段・直結2段 |
| 台車形式 | ボルスタレス台車 | 従来型台車 |
| 最高運転速度 | 110 km/h | 110 km/h |
エンジンや走行性能の違いをチェック

1500形と1200形の走行性能を決定づける最も大きな違いは、心臓部であるエンジンにあります。
1500形は、コマツ製のクリーンディーゼルエンジン「SA6D140HE-2」などを搭載し、最高出力は450馬力と強力です。前述の通り、このエンジンは環境性能に優れるだけでなく、燃費効率も向上しています。組み合わせる変速機も、より細かくギアを切り替えられる「直結4段」仕様のため、幅広い速度域でスムーズかつ効率的な走りを実現可能です。
一方、1200形は種車である1000形からエンジンと変速機をそのまま受け継いでいます。エンジンは同じくコマツ製の「SA6D-125H」で、最高出力は400馬力です。実績のある堅牢なエンジンですが、世代としては一世代前のものになります。変速機も「直結2段」仕様であり、1500形と比較するとやや大味な走行フィールとなる傾向があります。
このように、1500形は出力で50馬力勝るだけでなく、より近代的で効率的なパワートレインを備えている点が大きな特徴です。この性能差がある二つの形式が連結して走る際は、制御システムが両者の出力を巧みに調整し、一体の列車として滑らかな加減速を実現しています。
ワンマン運転対応の違いはあるのか
両形式ともに、運転士一人のみで運行するワンマン運転に対応した設備を備えています。そのため、ワンマン運転が可能か否かという点での明確な違いはありません。徳島地区の多くの普通列車がワンマンで運行されており、どちらの形式もその役割を問題なくこなすことができます。
ただし、細かな設備には世代の差が見られます。例えば、運賃箱や整理券発行機、車内の運賃表示器といった機器類は、1500形の方がより新しい世代のものが搭載されている場合があります。
1200形も改造時にワンマン関連機器が更新されていますが、ベースは1990年代に製造された1000形です。そのため、機器のプログラムやハードウェアの仕様が1500形と完全には同一ではないケースも考えられます。乗客として利用する上で大きな差を感じることは少ないですが、こうした細かな点に両形式の出自の違いが表れているのです。

見た目でわかるJR四国 1500形・1200形の違い
- 外観デザインと塗装の細かな特徴
- 車内設備と座席レイアウトの差は
- 乗客が感じる快適性・静粛性の比較
- 主な運行区間の違いについて
- 今後の運用予定と置き換えの動向
- まとめ:JR四国 1500形・1200形 違いの要点
外観デザインと塗装の細かな特徴

1500形と1200形は、どちらも緑を基調とした塗装で一見するとよく似ていますが、注意深く観察すると多くの違いを発見できます。
車体の大きさと形状
最も分かりやすい違いは、車体の断面形状です。1500形は、車内空間を広く取るために車体幅が2,900mmとワイドに設計されています。対する1200形は、ベースとなった1000形の車体(幅2,800mm)をそのまま使用しているため、少しスリムです。両者が連結していると、車体の幅の違いがよく分かります。
細部のデザイン
前面下部にある「スカート」と呼ばれる排障器の形状も異なります。1500形は曲線的で一体感のあるデザインですが、1200形は1000形由来のシンプルな形状のままです。
また、車体側面には徳島県の名産である「すだち」をモチーフにした可愛らしいロゴマークが描かれていますが、これは1500形だけの特徴で、1200形にはありません。
塗装の微妙な差
全体の統一感を出すために1200形は1500形風の塗装に変更されましたが、実は緑色の色合いが微妙に異なると言われています。光の当たり方などで見え方が変わるため一概には言えませんが、並んだ際には色の違いを探してみるのも面白いかもしれません。
車内設備と座席レイアウトの差は
車内に入ると、外観以上にはっきりとした違いを体感できます。座席配置はどちらも転換クロスシートを主体としたセミクロスシートですが、快適性や利便性には大きな差があります。

バリアフリー性能の格差
乗客にとって最も大きな違いが、バリアフリーへの対応レベルです。
1500形は、設計当初からバリアフリーを前提としています。床が低く作られ、駅ホームとの段差がほとんどないため、乗り降りが非常にスムーズです。車椅子対応の大型トイレや専用スペースも完備されており、誰もが安心して利用できる設計です。
一方、1200形は床が高い1000形の車体を流用しているため、多くの駅で乗車時にステップを上がる必要があります。改造でトイレは設置されたものの、既存のスペースに後付けされたものであり、1500形の広々としたトイレには及びません。この8cmの床の高さの違いは、両形式が連結された際の貫通路に明確な段差を生じさせ、車内での移動のしやすさにも影響を与えています。
案内設備
車内の運賃表示器やドア上の案内表示といった設備も、1500形の方が新しい世代のものが採用されており、より見やすく情報量も多い傾向があります。
乗客が感じる快適性・静粛性の比較

乗り心地という点でも、両形式には体感できる差が存在します。
まず、1500形は「ボルスタレス台車」という新しい構造の台車を採用しています。これは、乗り心地を向上させ、軽量化にも貢献する技術です。加えて、前述したクリーンディーゼルエンジンは、従来のエンジンに比べて作動音が静かです。これらの要素が組み合わさることで、1500形は揺れが少なく静かな、快適な移動空間を提供します。
対照的に、1200形は1000形から引き継いだ従来型の台車とエンジンを使用しています。そのため、走行中は1500形に比べてやや大きなエンジン音や振動を感じることがあります。もちろん、決して乗り心地が悪いわけではありませんが、両者を乗り比べると、その差は多くの人が感じ取れるレベルにあると言えるでしょう。
この快適性の違いは、完全新設計で最新技術を惜しみなく投入した車両と、既存車両の改造で生まれた車両という、根本的な成り立ちの違いから来るものです。
主な運行区間の違いについて

1500形と1200形の運用範囲に、明確な違いはありません。両形式は共に徳島運転所に所属し、徳島地区の主力車両として一体的に運用されています。
主な活躍の場は、高松と徳島を結ぶ高徳線、徳島から阿南・牟岐方面へ向かう牟岐線、そして徳島から阿波池田へ至る徳島線です。これらの路線の普通列車として、広範囲でその姿を見ることができます。
運用上の特徴は、単独で走るよりも、むしろ両形式が連結して走る機会が非常に多いことです。最も一般的なのは、1500形1両と1200形1両をつないだ2両編成で、これが多くの普通列車の基本の形となっています。1200形は、1500形だけでなく未改造の1000形とも連結できるため、需要に応じて様々な組み合わせの編成を可能にする、運用上の「潤滑油」のような重要な役割を担っているのです。

今後の運用予定と置き換えの動向

1500形と1200形は、今後も長きにわたり徳島地区の地域輸送を支え続ける見込みです。特に、1200形の存在はJR四国の車両運用戦略において非常に重要と考えられています。
その証拠に、2023年度からは1200形に対してリニューアル工事が開始されました。この工事では、車内の床材や座席モケットの張り替えなどが行われ、内装が一新されています。これは、JR四国が1200形を単なる古い車両の延命ではなく、今後も第一線で活躍させるための重要な投資と位置づけていることを示しています。
このリニューアルにより、1200形はまだまだ活躍を続けることが確実となりました。したがって、近い将来にどちらかの形式が新型車両に置き換えられるといった具体的な計画は、現在のところ存在しません。新旧の技術をつなぐ1200形と、次世代の標準である1500形。この二つの形式が協力し合う体制は、当面の間、徳島地区の鉄道網を支える根幹であり続けるでしょう。

まとめ:JR四国 1500形・1200形 違いの要点
この記事で解説してきた、JR四国1500形と1200形の違いに関する要点を以下にまとめます。
- 1500形は旧型車両の置き換えを目的にした完全新設計の車両
- 1200形は1000形を改造し1500形と連結可能にした車両
- 1500形は環境性能とバリアフリーを重視して開発された
- 1200形は既存資産の有効活用という合理的な目的で誕生した
- 1500形のエンジンは450馬力のクリーンディーゼル
- 1200形のエンジンは400馬力の従来型ディーゼル
- 1500形は車体幅が広く床が低いワイドボディ
- 1200形は1000形由来のスリムな車体
- 車体側面のすだちロゴは1500形だけの特徴
- 1500形はステップレスで乗り降りがしやすい
- 1200形は乗降時にステップを上がる必要がある
- 1500形は大型の車椅子対応トイレを完備
- 乗り心地は新型台車と静かなエンジンを持つ1500形が優れる
- 両形式は徳島地区の主要路線で一体的に運用されている
- 1200形はリニューアル工事が進められ今後も活躍が見込まれる

