「徳島 汽車 なぜ」というキーワードで検索されたあなたは、きっと多くの疑問をお持ちのことでしょう。例えば、日本で唯一電車が走らない県はどこかと問われれば、その答えは徳島県です。では、徳島県には電車がありませんが、なぜですか、という根本的な問いや、そもそも徳島県はなぜ汽車と呼ばれているのか、という文化的な背景に強い関心があるのかもしれません。
さらに、徳島の汽車は何で動くのか、それはディーゼルエンジンで軽油という燃料で走るのか、そして現在の徳島県内のJRによる運行状況はどのようになっているのか、具体的な情報も知りたいところだと思います。この記事では、歴史的、経済的、そして地理的な視点から、これらの疑問一つひとつに丁寧にお答えしていきます。
- 徳島で鉄道が「汽車」と呼ばれる歴史的・文化的背景
- 徳島の鉄道がディーゼルで走り続ける経済的・地理的理由
- JR四国が徳島県で運行する最新の特急車両や観光列車の魅力
- DMVなど電化に頼らない徳島の新しい交通の未来像
なぜ徳島は汽車と呼ぶ?その歴史と文化的背景

- 日本で唯一電車が走らない県はどこ?
- 徳島県はなぜ汽車と呼ばれている?
- 徳島県には電車がありませんが、なぜですか?
- 幻に終わった私鉄の電化計画
- 電車が走らないアーク伝説という物語
日本で唯一電車が走らない県はどこ?
日本の47都道府県の中で、旅客用の鉄道路線に電化区間が1メートルも存在しない、唯一の県があります。その答えが、四国に位置する徳島県です。
全国を見渡せば、JRや大手私鉄の路線はもちろん、地方のローカル線や路面電車に至るまで、何らかの形で電気を動力とする鉄道が走っています。実際に、徳島県に隣接する県に目を向けても状況は対照的です。香川県や愛媛県にはJR四国の電化された路線が走り、本州からの特急電車が乗り入れています。また、高知県には市民の足として親しまれる路面電車が存在します。
このような状況の中で、徳島県だけが非電化の鉄道網を維持しているという事実は、日本の鉄道インフラにおける特異なケースです。この「唯一」という点が、徳島の鉄道を語る上での全ての始まりであり、多くの人々の好奇心をかき立てる源泉になっていると考えられます。
徳島県ではなぜ汽車と呼ばれている?

徳島県民の多くが、JRの列車を指してごく自然に「汽車」と呼びます。これは単なる方言や古い言い方が残っているというわけではなく、徳島の鉄道が歩んできた歴史と、県民の実体験に深く根差した文化的な現象です。
その理由は、県内に比較対象となる「電車」が営業運転で走ったことが一度もないためです。多くの日本人が住む地域では、近代化の過程で蒸気機関車(SL)が電車に置き換わっていきました。それに伴い、鉄道車両を指す日常語も「汽車」から「電車」へと変化しました。しかし徳島では、蒸気機関車の次に主役となったのは、電気で走る電車ではなく、軽油を燃料とするディーゼルカー(気動車)でした。
このため、かつて鉄道の代名詞であった「汽車」という言葉が、その後のディーゼルカーをも含めた「JRの線路を走る乗り物全般」を指す総称として、意味合いを広げたまま現代まで使われ続けているのです。遠く離れた北海道の一部でも同様の言語文化が見られ、これは電化が進まなかった地域に共通する興味深い特徴と言えます。要するに、徳島における「汽車」という呼称は、地域の鉄道史が人々の言葉の中に刻み込まれた、生きた化石なのです。
徳島県には電車がありませんが、なぜですか?
徳島県に電車が走っていない理由は、単一の出来事で説明できるものではありません。これは、「歴史的な経緯」「経済的な合理性」「地理的な制約」という、三つの大きな要因が長年にわたって複雑に絡み合った結果と考えることができます。
第一に、歴史的な分岐点での選択が挙げられます。20世紀初頭には電化を目指した私鉄が存在したものの、その計画は頓挫しました。この最初のつまずきが、その後の徳島の鉄道の方向性を大きく決定づけました。
第二に、経済的な視点です。鉄道を電化するには、架線や変電所といった地上設備に莫大な初期投資と維持費がかかります。徳島県内の路線の輸送量を考えると、ディーゼルカーを運行する方が、総コストを低く抑えられるという経営判断が現在に至るまで続いています。
第三に、抗いがたい地理的な制約の存在です。特に県外へ抜ける主要な路線には、電化工事を著しく困難にする物理的な障壁があります。
これらの要因は、それぞれが独立しているのではなく、相互に影響し合っています。続く見出しで、これらの理由を一つずつ掘り下げていきますが、まずは「たまたま電化されなかった」のではなく、そこには必然的な理由の積み重ねがあったという点を理解することが、この謎を解く鍵となります。
幻に終わった私鉄の電化計画

徳島の鉄道が非電化の道を歩むことになった、その最も根本的な原因は、今から100年以上前の20世紀初頭に遡ります。その鍵を握るのが、「阿波電気軌道」という名の私鉄会社の存在でした。
1912年に設立されたこの会社は、その社名が示す通り、当初は電気を動力とする鉄道、すなわち「電車」を走らせることを目指していました。もしこの計画が実現していれば、徳島には早くから電化路線が誕生し、その後の鉄道史は全く異なるものになっていた可能性が高いです。
しかし、阿波電気軌道は資金難か、あるいは他の何らかの理由により、電化計画を実現することができませんでした。結果として、社名に「電気」を掲げながらも、一度も電車を走らせることなく、蒸気機関車やガソリンカーを運行するに留まったのです。このため、後世の研究者や鉄道愛好家から「幻の電鉄」と呼ばれることもあります。
重要なのは、この阿波電気軌道が建設した路線(現在のJR高徳線や鳴門線の一部)が、後に国の所有となったことです。国が継承したのは、電化された路線ではなく、非電化のままであった路線でした。この歴史的な出来事が、その後の徳島の鉄道インフラの方向性を決定づける「最初のボタンの掛け違い」となり、一世紀以上にわたる非電化の歴史の原点となったのです。
電車が走らないアーク伝説という物語
徳島に電車が走らない理由について、経済合理性や歴史的経緯とは全く異なる、神秘的で壮大な物語が地域で語り継がれていることは、非常に興味深い文化現象です。それは、徳島が誇る霊峰・剣山(つるぎさん)に、古代ユダヤの失われた聖櫃「アーク」が眠っているという伝説に基づいています。
この物語によれば、四国八十八箇所を巡るお遍路の巡礼路が、聖なるアークをこの地に封印するための強力な結界を形成しているとされています。そして、もし徳島に電車が走り、パンタグラフと架線との間で火花、すなわち「アーク放電」が発生すると、そのエネルギーが結界を破壊し、世界に災いをもたらしかねない聖櫃を解き放ってしまう、というのです。
ここには、聖櫃の「アーク(Ark)」と、電気の火花である「アーク(Arc)」をかけた、巧みな言葉遊びが存在します。もちろん、これは科学的な根拠に基づく話ではありません。しかし、地域社会が、電化インフラがないというある種の「欠落」を、ネガティブなものとして捉えるのではなく、「我々が聖なるものを守護しているのだ」というポジティブで誇り高い物語へと昇華させる、見事な例と言えます。無味乾燥な現実にロマンあふれる意味を与えることで、地域独自のアイデンティティを育む役割を果たしているのです。
なぜ徳島は汽車と呼ぶ?ディーゼル技術と未来

- 徳島の汽車は何で動く?
- 徳島の汽車がディーゼルである経済的な理由
- 電化を阻むトンネルという物理的な壁
- 徳島JRを走る高性能な特急列車
- 世界初のDMVが拓く未来の交通
徳島の汽車は何で動く?
現在、徳島県民が「汽車」と呼ぶJR四国の列車は、その全てが軽油を燃料とする「ディーゼルエンジン」を動力源としています。これは、架線からパンタグラフを通じて電気を取り込み、モーターを回して走る「電車」とは、根本的に仕組みが異なります。
ディーゼルカーは、専門的には「気動車」とも呼ばれ、車両自体にエンジンと燃料タンクを搭載しています。そのため、外部からエネルギーを供給してもらう必要がなく、線路さえあればどこでも自力で走行できるのが最大の特徴です。この自己完結したシステムのおかげで、架線や変電所といった高価な地上設備が一切不要になります。
国鉄時代、全国で蒸気機関車(SL)を廃止する「無煙化」が進められた際、多くの幹線では電化が選択されました。しかし、四国、特に徳島では、このディーゼルカーへの転換が近代化の主な手法となりました。石炭の輸送に不利だった四国にとって、ディーゼル化は電化よりもはるかに費用対効果の高い選択肢だったのです。この時に確立された運行システムが、今日まで引き継がれている形となります。
徳島の汽車がディーゼルである経済的な理由

徳島の鉄道が電化されず、ディーゼル方式で運行を続けている背景には、極めて現実的な経済計算があります。一言で言えば、電化するよりもディーゼルカーを走らせる方が、トータルのコストを低く抑えられるという経営判断があるためです。
電化に伴う莫大なコスト
鉄道の電化は、私たちが想像する以上に大規模な投資を必要とします。
- 初期投資
線路の上に架線(カテナリー)を張り、それを支える電柱を無数に立て、数キロおきに電力を供給するための変電所を建設する必要があります。これらの地上設備にかかる費用は、路線長によっては数百億円規模に達することもあります。 - 維持管理費
これらの設備は一度作れば終わりではなく、安全な運行を続けるために、定期的な点検や補修が欠かせません。この維持管理費も、鉄道会社の経営に継続的な負担となります。
運行本数が少ない路線での非効率性
都会の路線のように数分おきに列車が走る高頻度運行の区間であれば、電化のメリットは大きくなります。電気はディーゼル燃料(軽油)に比べてエネルギーコストが安く、大量輸送による収益で初期投資を回収できる見込みが立つからです。
しかし、徳島県内の路線のように運行本数が限られている場合、電化によるランニングコストの削減効果は限定的です。むしろ、高額な地上設備の維持費が経営の重荷になる「投資対効果の悪さ」が際立ってしまいます。特に、収益性の高い新幹線を持たないJR四国にとって、大規模な設備投資には極めて慎重にならざるを得ないのが実情です。
以下の表は、地方路線における電化と最新型ディーゼルカー(気動車)の特性を比較したものです。
要素 | 電化(電車) | 最新型気動車(汽車/DMU) | 備考 |
初期インフラ費用 | 非常に高い | ほぼゼロ | 架線、変電所等の建設費が不要 |
年間維持管理費 | 高い | 低い | 地上設備の保守コストが経営を圧迫する可能性 |
性能(速度・加速) | 非常に高い | 高い(電車に匹敵) | 最新の2700系気動車は最高速度130km/hを達成 |
運行の柔軟性 | 低い(電化区間のみ) | 非常に高い | 非電化区間であればどこでも走行可能 |
このように、非電化という選択は、技術的な遅れというよりも、特定の条件下における合理的な経営判断の結果なのです。
電化を阻むトンネルという物理的な壁

経済的な理由に加えて、徳島の鉄道の電化を阻む、非常に厄介な物理的障壁が存在します。それは、高松と徳島を結ぶ大動脈である高徳線が、香川県との県境にある讃岐山脈(阿讃山脈)を貫く区間に存在する、古いトンネル群です。
これらのトンネルは建設された年代が古く、現代の規格と比べて内部の空間、すなわち断面積が非常に小さいという特徴があります。これが、電化に対して決定的な制約となっているのです。
鉄道を電化する場合、車両の屋根に取り付けられたパンタグラフと、トンネルの天井との間に、電気がショートしないための安全な絶縁距離を確保しなくてはなりません。しかし、高徳線の古いトンネルでは、この空間的な余裕が全く足りないのです。
これを解決するには、以下のいずれかの大規模な土木工事が必要となります。
- トンネルの拡張: トンネル自体の天井を削り、断面を大きくする。
- 盤下げ: 線路が敷かれている地面(路盤)を掘り下げ、線路の位置を低くする。
どちらの方法も、平地に架線を張るのとは比較にならないほどの莫大な追加コストと、工事期間中の長期にわたる列車の運休を伴います。この「トンネル問題」は、ただでさえ厳しい電化の費用対効果を根本的に悪化させ、ディーゼルという代替案をより一層現実的なものにしています。技術の進歩でディーゼルカーの性能が向上した現在、この物理的な壁を乗り越えてまで電化を推し進める経営的なメリットは見出しにくいのが現状です。
徳島県を走る高性能な特急列車

「非電化」や「汽車」と聞くと、どこか時代遅れで速度の遅い列車をイメージするかもしれませんが、徳島を走る特急列車はそのイメージを根底から覆します。現在のJR四国は、電化せずとも高品質な高速鉄道サービスを提供できる、世界トップクラスの高性能ディーゼルカーを投入しています。
その代表格が、高松と徳島を結ぶ特急「うずしお」で活躍する2700系気動車です。この車両は、非電化の常識を打ち破るいくつかの最新技術を備えています。
振り子式車体傾斜装置
最大の武器は、「振り子式」と呼ばれる車体傾斜装置です。これは、カーブに差し掛かると車両自体を内側に傾けることで、乗客が感じる遠心力を和らげる技術です。これにより、カーブでも速度をあまり落とすことなく、安定した乗り心地のまま高速で通過することが可能になります。
電車に匹敵する最高速度
この技術のおかげで、2700系の最高速度は時速130キロメートルに達します。これは、日本の多くの電車の特急と遜色ない、あるいはそれを凌駕するほどのトップクラスの性能です。かつては「速達化のためには電化が不可欠」と考えられていましたが、現代においては、高性能ディーゼルカーという強力な選択肢が存在することを、この2700系が証明しています。
合わせて読みたい参考記事:2700系 化け物と呼ばれる理由と魅力の全貌紹介
利用者が減少を続ける地方路線において、もはや電化は活性化の万能薬ではありません。技術の進歩が、ディーゼル運行という経済合理性をさらに後押しする形で、徳島の非電化という現状をより強固なものにしているのです。
形式 | 種別 | 主な列車・用途 | 最高速度 | 主な特徴 |
2700系 | 特急形気動車 | 特急「うずしお」 | 130 km/h | 振り子式車体傾斜装置、現行の主力特急 |
2600系 | 特急形気動車 | 特急「うずしお」 | 120 km/h | 空気ばね式車体傾斜装置 |
1500形 | 一般形気動車 | 普通・快速列車 | 110 km/h | 環境配慮型エンジン搭載の主力普通列車 |
キハ185系 | 特急形気動車 | 観光列車「藍よしのがわトロッコ」 | 110 km/h | 国鉄末期製造の車両を観光用に改造 |
合わせて読みたい参考記事:JR四国 2600系の導入背景と現在の運用
世界初のDMVが拓く未来の交通

徳島県は、非電化という状況を逆手に取り、架線に頼らない新しい交通システムの実験場へと変貌しつつあります。その最も象徴的な取り組みが、徳島県南部から高知県東部にかけての沿岸部を走る第三セクター「阿佐海岸鉄道」が導入したDMV(デュアル・モード・ビークル)です。
2021年12月、このDMVは世界で初めて本格的な営業運転を開始し、鉄道史に新たな1ページを刻みました。DMVは、マイクロバスをベースに改造された車両で、道路では通常のバスとしてタイヤで走り、駅に設けられた専用の「モードインターチェンジ」で鉄道用の鉄輪を出し入れすることで、線路上を列車として走行できる画期的な乗り物です。
この導入の最大の目的は、深刻な赤字と利用者の減少に喘ぐローカル鉄道の生き残りをかけた起死回生策でした。
- メリット
鉄道の定時性と、集落の細い道まで入っていけるバスの柔軟性を組み合わせることで、乗り換えなしのシームレスな移動を提供できます。また、「世界初」という話題性そのものが強力な観光資源となり、多くの観光客を呼び込むことに成功しました。 - デメリット・課題
一方で、車両が小さく定員が少ないため、ラッシュ時の通勤・通学輸送には限界があります。また、観光アトラクションとしての側面が強い一方で、地域住民の日常の足としての利便性にはまだ改善の余地があるとの指摘もあります。
それでもなお、DMVは、人口減少が著しい地域でいかにして公共交通を維持していくか、という全国的な課題に対する、前例のない大胆な挑戦です。徳島は、意図せずして、日本の地方交通が目指すべき未来の姿を模索する最前線となっているのです。
なぜ徳島では汽車と呼ぶのか。まとめ
この記事では、「なぜ徳島では汽車と呼ぶのか」という疑問について、多角的に掘り下げてきました。最後に、その答えとなる重要なポイントを箇条書きでまとめます。
- 徳島県は日本で唯一、旅客鉄道の電化区間がない県である
- そのため、県民はJRの列車を「電車」ではなく「汽車」と呼ぶ文化が根付いている
- 「汽車」という呼称は、蒸気機関車の時代からディーゼルカーへと引き継がれた
- 非電化の歴史的な原点は、私鉄「阿波電気鉄道」の電化計画の挫折にある
- 国が非電化の路線を継承したことが、その後の方向性を決定づけた
- 経済的な理由として、電化は莫大な初期投資と維持費を要する点が挙げられる
- 運行本数が少ない徳島の路線では、電化は投資に見合わないと判断されている
- 地理的な制約として、高徳線の古いトンネルの断面積が小さい問題がある
- トンネルの拡張工事には巨額の費用がかかり、電化の大きな障壁となっている
- 徳島の「汽車」の動力源は、軽油で走るディーゼルエンジンである
- 非電化でも、特急「うずしお」で活躍する2700系は最高時速130kmを誇る
- 車体傾斜装置などの技術革新により、ディーゼルカーは電車に匹敵する性能を持つ
- 非電化を逆手に取り、世界初のDMV(デュアル・モード・ビークル)が営業運転を開始した
- DMVは、人口減少地域の公共交通を維持するための新しい挑戦として注目されている
- 徳島の非電化は「遅れ」ではなく、歴史・経済・地理的要因による「合理的な選択」の結果である